章 30

その時はアレックスの誘いを喜んで受けたものの、家に帰ると現実に目が覚めた。

今持っている服では、このダンスパーティーに着ていけるようなものは一つもない。ブラックタイ・オプショナル指定で、セミカジュアルなんかじゃないのに、私の服なんて、ほとんどゴミみたいなものだし。映画の時に何とか間に合わせたあの格好は、まぐれみたいなものだったし、今回のディナーパーティーにはカジュアルすぎる。

こんなに場違いな格好じゃ、行けるわけがないと、愕然と悟った。

少しパニックになりながら、クローゼットの中身を全部引っ張り出す。もしかしたら、ずっと着ていない魔法のドレスか何かが眠っているかもしれない。どこかにしまい込んで...

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